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日蓮大聖人の御遺命
一、本門戒壇建立の意義
仏国実現の秘術
人は、国家を離れては生存し得ないという実相を、よくよく見つめなければいけない。人間は山の中で一人で生活をすることはできない。集団生活をし、社会を作り、相互扶助することによって初めて生きられる。「一切衆生は互いに相助くる恩重し」(十法界明因果抄)と。これが“一切衆生の恩”である。
さて、社会を作り集団生活をするには、集団内の個々の利害を調和させ、秩序を持つことが欠かせない。また外敵から集団を防衛しなくてはならぬ。この機能を欠いては集団生活は維持できない。これを果たすのが、公権カすなわち統治権力である。ここに国家が成立する。まさしく国家は、人間が生存していく上での、必要不可欠な社会的存在形態なのである。
政治学では、国家の成立要素として領土・人民・主権の三つを挙げるが、この「主権」こそ国家の統治権力すなわち国家である。これを仏法では「王法」という。
ここで重要なことは、王法の在り方いかんによって、国家の興亡盛衰がきまるということである。たとえば王法が修羅界の働きをすればどうなるか。内には人民を虐げて犠牲を強い、外には常に他国を脅かすような国となる。ヒットラー治下のドイツ、スターリンのソ連、今日の北朝鮮・中国などがそれに当ろう。また王法が衰微すれば、国内は秩序を失って内乱を誘発し、さらには他国の侵略を招くようになる。
もし王法が仏界化すれば、そのとき国家権力は慈悲の働きとなり、内には国民を守って幸福をもたらし、外には他国をも利益する。このとき諸天の働きにより国土には三災七難が消滅し、国家は真の安泰を得る。これが仏国である。
では、どうしたらこの仏国は実現するのであろうか。ここに本門戒壇建立の重大意義がある。
具体的に言おう --。
日本一同に南無妙法蓮華経と唱え奉る広宣流布のとき、国家意志の表明を以て国立戒壇を建立して戒壇の大御本尊を安置し奉れば、日本は仏国となるのである。
一国の総意を以て建てられた国立戒壇に戒壇の大御本尊が奉安されれば、日本国の魂は戒壇の大御本尊となる。御本仏を魂とする国は仏国ではないか。「日蓮は日本の人の魂なり」の聖語はこのとき事相となる。
まさしく本門戒壇の建立とは、戒壇の大御本尊の妙用により、日本を仏国とする秘術なのである。
もし日本に本門戒壇が建立されれば、この大波動はやがて全世界におよぶ。そしてこの本門戒壇を中心として、御予言のごとく「一同に他事をすてて南無妙法蓮華経と唱うべし」の時いたれば、世界が仏国土となる。このとき、地球上から戦争・飢餓・疫病の三災は消滅し、この地球に生を受けた者は、ことごとく心ゆくまで三大秘法を行じて、一生成仏を遂げることが叶うのである。
( 日蓮大聖人の仏法、冨士大石寺顕正会発行、浅井昭衞著、第九章より
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