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       日蓮大聖人の御遺命

    
一、本門戒壇についての日蓮大聖人の御指南


      
 三大秘法抄の文意(
2)

 大聖人は、なぜに戒壇建立の必要手続として「
国家意志の表明」を定め給うたのであろうか。

 謹んで聖意を案ずるに、
戒壇建立の目的は仏国の実現にある。仏国の実現は国家次元での三大秘法受持がなければ叶わない。一個人、一信徒団体、あるいは宗門だけで建てても仏国は実現しない。ここに広宣流布のとき、一国の総意を公式に国家意志として表明し、しかる後に建立すべしと、厳重に定め置かれたのである。
 この「
勅宣・御教書」の定めのゆえに、富士大石寺の先師上人は御遺命の本門戒壇を「国立戒壇」と呼称されてきたのである。

 「
霊山浄土に似たらん最勝の地」とは、一期弘法付嘱書を拝見すれば「富士山」たることは明白である。そして富士山の中には南麓の景勝の地「天生原」と、日興上人は定められている。

 以上のごとく三大秘法抄を拝すれば、まさしく御遺命の戒壇とは「
広宣流布の暁に、国家意志の表明を以て、富士山天生原に建立される国立戒壇」ということになる。
 この時、日本国の魂は御本仏の当体たる本門戒壇の大御本尊となる。御本仏を魂とする国はまさしく仏国ではないか。

 次に「
時を待つべきのみ」とは制試である。広宣流布以前に建てることを固く禁じ給うとともに、「広宣流布は大地を的とする」の御確信が、この御文にはこめられている。

 「
事の戒法と申すは是れなり」とは、国立戒壇の建立がそのまま事の戒法に当るということ。戒とは防非止悪(非行を防ぎ、悪行を止める)の意である。すなわち国立戒壇を建立すれば、本門戒壇の大御本尊の妙用により、国家そのものが防非止悪の当体となる。そのとき国家権力は、内には人民を虐げず、外に他国を害せず、内外に慈悲の働きとなる。

 そしてこの仏国に生ずる国民もまた、一人ひとりが自ずと持戒の徳用を発揮する。すなわち世間の道徳や小乗の戒律は他律的であるが、本門の大戒は御本尊を信ずることにより、自然と我が身が防非止悪・自利々他の当体となるのである。
 このとき、貪・瞋・痴の三毒にまみれ凶悪犯罪で満ちている現今の社会は、その様相を一変する。

 「
三国並びに一閻浮提の人・懺悔滅罪の戒法のみならず、大梵天王・帝釈等も来下して踏み給うべき戒壇なり」とは、本門戒壇の功徳の広大を示し給うものである。この国立戒壇は日本のためだけではない、中国・インドおよび全世界の人々の懺悔滅罪の戒法でもある。
 いや人間界だけではない、その利益は天界の衆生にまで及ぶ。ゆえに「
大梵天王・帝釈等」もこの本門戒壇に来下し、日本および全世界を守護するのである。このとき、国土から三災七難は消滅し、人々は三大秘法を行じて自受法楽し、この地球は事の寂光土となる。

 日蓮大聖人の究菟の本願はここにあられる。ゆえに別して日興上人に、総じては門下一同に、この国立戒壇の建立を御遺命あそばされたのである。

         (  日蓮大聖人の仏法、冨士大石寺顕正会発行、浅井昭衞著、第九章より  )


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