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   正道に還れ

 (略)

 由来仏法は伝法相承のことを重んずるが、此れは能伝の人正しからざれば、所伝の法又正しからざるによるが故である。(略)

 黄河の水は常に濁ると聞くが、水は自ら濁るものでなく流れに沿ふて濁る。
法水も法器によつて濁る。清浄なる法器を求めて法を付する所以も、実に此にある。
 蓋しいづれの世にも、
天魔が聖を装ふて法を破ることが多い。相承の大儀が公明正大・厳密に行はるるは、此れが為である。

 法華・虚空会に於て釈迦牟尼世尊、法を地涌の菩薩に付するに、尚多宝・坐にあり。(略) 聖祖・弘安五年九月、法を興尊に嘱し給ひ

 
日蓮一期の弘法、白蓮阿闍梨日興に之を付嘱す、本門弘通の大導師たるべきなり、国主此の法を立てらるれば富士山に本門寺の戒壇を建立せらるべきなり、時を待つべきのみ、事の戒法と云うは是なり、就中我が門弟等此の状を守るべきなり。
      弘安五年壬午 九月 日   日蓮在判  血脈の次第 日蓮日興


 と、ついで十月十三日

 
釈尊五十年の説法、白蓮阿闍梨日興に相承す、身延山久遠寺の別当たるべきなり、背く在家出家どもの輩は非法の衆たるべきなり。
      弘安五年壬午十月十三日  武州池上 日蓮在判


 と此れ、聖祖・法の大儀を重ぜられ、此れによつ
天魔の法を破る隙なからしめ給はんとせられたのである。三世の諸仏の施化は終始整備して、毫末も欠くるところなく炳焉として具足している。
 此くの如き
厳然たる証明があつて、御滅後の衆生・少しも付法の師に迷ふところがない筈である。

 (略)
                         ( 大日蓮 昭和六年四月 )


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