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    富士門徒の沿革と教義

       (
宗旨を失うは頽廃の集団

 宗門によって宗旨、宗教は相続する。しかし宗旨を失った宗門は、もはや宗門でさへなく頽廃の集団にすぎない。
 弥陀念仏を許した瞬間に、日蓮宗は宗旨を放棄した禿顱団に変る。
漆千杯に蟹足一本だ。

 (略)

 さて富士の場合、
不受不施の化儀をあく迄も保ちたかったが、延山暹師の権門を背にした押し捲りに遭ったのは、要集史料類聚に見えてゐる。然しその後は朱印も受けるし、大石寺宥師は独礼席にも進むといった調子で、官辺との調和はまことによろしい。
 国主は特別だから受不施、その他は不受不施と割切った為でもあらう。

 しかし、いかに
仏法相続の為とは言ひ乍ら、化儀を曲げるのは重大問題であり、殊に御書の意をそのままに受取れば、それが甚しい非行であるといふ非難も起って来ようといふものだ。
 この場合、前述の二者択一を考へれば、受不施も亦やむをえない事も納得できるのだが、
守文の猪武者にはさうした上人方の苦衷は分らない。

 唯・祖文の儘に平押ししようとして、貫主をさへ仏法違背・己義の人と見るやうになる。それでは宗門の示しがつかないから破門すると、今度は自由勝手に活動して、石垣に頭をぶつける事となる。
 意気まことに壮とすベしだが、あの時代としては気狂じみた行動とすべきだらう。これが異流義である。
 
 富士門徒から分れた異流義には、三鳥派と堅樹日好流があるが、三鳥派は何が原因で破門されたのか、何を主張したのか、史料がま滅して分らない。唯・本因妙を標榜した事、後年は日蓮迹・自分本といふ、どえらい本述論を出した事だけが分る。化儀に関するものは見当らない。




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