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         御法主上人猊下御指南

     
創価学会秋谷会長外十二名の連名による質問に対する回答・教示
 
                                      
 ( 訓諭の定義に関する非難への論駁

 つぎに、訓諭中の正本堂の定義に関する非難について回答します。

 先にその文を挙げます。「正本堂は、一期弘法付嘱書並びに三大秘法抄の意義を含む現時におる事の戒壇なり。即ち正本堂は広宣流布の暁に本門寺の戒壇たるべき大殿堂なり」

 この文中の前文は、正本堂が『一期弘法付嘱書』『三大秘法抄』の意義を含む現時における事の戒壇ということであり、この「意義を含む」とは全面的に意義が顕われたということでなく、まだ広布の進展が部分的であることを示すものです。したがって、正本堂に戒壇の御本尊を安置するという意味はあっても、ただちに『一期弘法抄』『三大秘法抄』の戒壇としての達成ではなく、現在の時において本門戒壇の大御本尊まします堂であるから、事の戒壇と称するとの意です。

 後の文は、正本堂は広宣流布の暁に本門寺の戒壇たるべき大殿堂ということで、そこに正本堂が広布の暁において本門寺の戒壇となると確定する意味をもつか否かについて申します。
 この「たるべ」の「たる」とは、体言につく場合に、確かに断定の助動詞の連休形でありました。しかし、「たり(たる)」で終っているのなら、確かに断定の意味に限定されますが、下に「べし(べき)」の助動詞がつくことにより、「べし」のもつ様々な広い意味に解釈されることになります。「べき」の語は、推量の助動詞としての広い用法があります。
 『日本国語大辞典』によれば、その第一はよろしい状態として是認する意を表わすもの。その中で

  (イ)ふさわしいとして適当であるという判断、
  (ロ)当然のこととしての義務の判断、
  (ハ)他人の行為に関して勧誘又は命令を表わす。


 その第二は確信をもってある事態の存在や実現を推量し、また予定することを表わす。その中で

  (イ)近く事態の起こることを予想する意、
  (ロ)遠く見えないところで進んでいる事態の断定を表わす、
  (ハ)将来事態の実現を予定する意、
  (ニ)自己の行動に関し、強い意志を表わす。


 その第三はすることができる、できそうだとの可能の判断を表わす等があります。そのほか、角川『新版古語辞典』では、

   @ 確信ある推測を表わす、
   A 予想の意を表わす、
   B 予定の意を表わす、
   C 当然の意を表わす、
   D 必要、義務の意を表わす、
   E 適当の意を表わす、
   F 強い勧誘、押し付けの意を現わす、
   G 決意を表わす、
   H 可能性をがある


と推定する意を表わす等があります。

 したがって、その微細な表現や意味は、諸説紛々としています。このような場合、その意義の決定は、一文一文の状況、すなわちその前後の文の意味合いによって、「たるべき」の意が種々に異なるのです。

 しかるに、学会では、自ら「当然、推量、可能、命令、意志・決意」の五意があるというにもかかわらず、訓諭の「たるべき』と二箇相承の「たるべき」について、何の根拠も示さずに同意義であるかのように論じています。すなわち、「猊下のように、あやふやな未定の意も含んだ『べき』と拝したならば、たとえば、次の身延相承書、池上相承書の二箇相承に記されている『たるべき』は、いかに拝さなければならないのでしょうか。…この両書は…未定・変更の可能性を含んだ推量であるはすがありません。…猊下のご説法のように解することは、到底、不可能であると思いますが…」と述べることは、全く事物の分別がついていない論難です。

 両相承は師資相承の書であり、大聖人より日興上人への命令、すなわち前述の日本国語大辞典の用例中、第一の(ハ)に当たるので、大聖人、日興上人の伝法の深義に約して、絶対的命令の意味があるのです。しかし、訓諭の「べき」の用例は、正本堂の意義についての、教えさとす文であり、種々の用例の中で、そのいずれに当たるかは、あくまで前後の文意によることです。とくにこの場合は「広宣流布の暁」及び『一期弘法抄』の文義による「本門寺戒壇」という重大性に基づく未来の広布の様相に引き当てて深く考えなけれはならないと思います。

 所詮、
御仏意による広布は未来のことであるから、広布達成の時、本門寺の戒壇となるか否かは、予定であるから、また未定の意もあると達観すべきであると信じます。このことは、さらに後に結論的に述べます。

                     (上記科段は、便の為当サイトで添加

 
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