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権力者の心理学
第一章 指導者の心理学
8 老人ぼけと後継者問題
成功率の高い後継者、低い後継者
(略) あまりにも偉大な父親の場合、子供たちは彼の影に隠れてしまい、ある場合には去勢されたようなイエスマンになり、ある場合はドラ息子になり、ある場合は反抗して父親を乗りこえようとする。(略)
この種の二世経営者の 無理な試みによって倒産した会社は、高砂熱学をはじめ枚挙にいとまがない。(略)
ただ、神経症というものが一般にそうであるように、エディプス・コンプレックスは
創造や活動性のエネルギー源になる。
偉大であるとともに場合によっては異様で 多少とも専制的でわけのわからない父親に対する
屈折した感情をエネルギー源にして、父親が最も嫌いそうな方針をとって、それによって事業を新しい時代に適応させ、秀忠型の二世経営者であれば倒産したかもしれない企業を
一時でもかえって発展させたという意味でなら、私たちは堤清二氏や角川春樹氏の例を知っているわけである。
これらの人たちは、むしろ自意識過剰の内省的な人たちであって、一見そうでなさそうな角川氏の場合でも、自分のもっているエディプス・コンプレックスの存在を自認し、それがどのくらい自分を無意識に動かしているかをよく知っていて、それが一種の「無意識信仰」にまで到達しているように見え、かなりきわどい防衛規制が用いられていることは、傍目にもよくわかる。
もっとも、こういう具合の網わたりが成功するのは、後継者側のほうでなみなみならぬ天分を必要とするのであり、初代に比べてラクだとも言いがたいくらいであろう。
一般には 「偉大な父」の息子であり、あるいは「指名された後継者」であることは、失敗の確率の高い状況なのである。
むしろ、一般に、人生において成功率が高いのは、ちょっと頼りない父親と、しっかり者の母親とのあいだに
長男として生まれてくることである --- という アメリカでの意外な調査結果もあるのであり、筆者の日本人についての事例研究の結果も
これを裏づけている。
( 句読・改行等、便のため当サイトにて添加 )
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