年頭の辞
濁悪の世に広布は駸々(しんしん)と進む
冨士大石寺顕正会 会長 淺井昭衞
昨年平成九年は、まさしく日本の広布史上において期を画する年であった。
すなわち、亡国の迫るを知らず安逸を貪る全日本人に対し、「日蓮によりて日本国の有無はあるべし」の重大の御聖意を、大音声を以て告げ知らしめた年。
そしてこれより、七百年来の宿願たる国立戒壇建立の最終段階の戦いは、開始されたのであった。
日本の人々は、この国に久遠元初の御本仏が出現されたことを知らない。ゆえにこの御本仏の大慈悲の御化導に対し、元品の無明を起こし、一国こぞって罵り、流罪し、ついには御頸を刎ね奉るという、身の震えるような大逆罪を犯し奉ったのであった。
この大禍は現当(御在世・滅後)に免れがたい。ゆえに御在世には、梵天・帝釈・日月・四天等の諸天は大蒙古の責めを以て一国を強く罰した。
滅後の罰を見れば、御頸を刎ね奉らんとした首謀者・平左衛門は、大聖人滅後十二年にして一族残らず誅戮され、鎌倉幕府もまた滅後五十二年にして滅亡している。
そして日本国は、大聖人滅後七百年にして漸(ようや)く罰あらわれ、今まさに国亡びんとしているのである。その先相こそ、御在世以後の最大といわれる「平成九年の大彗星」であった。
ここに"火宅に遊ぶ子"のごとき全日本人に対し、「日蓮大聖人に帰依しなければ日本は必ず亡ぶ歳」として、大聖人の大恩徳と日本の亡びゆくさまを告げ知らしめたのが、昨年の一国諌暁であった。
見よ、それより六ヶ月――。経済大国を誇っていた日本は、あっという間に傾いてしまったではないか。いまや「平成恐慌」の地鳴りが聞える。この日本の経済危機の波及を恐れるクリントン大統領に威されたのであろう、橋本首相は「日本発の世界恐慌だけは起こさない」などと、あらぬことまで口走っている。
あれほど首相が意気込んでいた行政改革は失敗、そして財政再建は不可能。その上、内閣の最重要課題と位置づけていた沖縄・普天間飛行場の返還も、名護市の住民投票で暗礁に乗り上げている。この一事は、日米同盟の亀裂をも招きかねない。――諸天が捨離すれば、このように瞬時にして、八方塞がりとなるのである。
人々がいま大騒ぎしている経済危機などは、末だ亡国の序曲に過ぎない。大地動乱はすでに足元に追っている。今後、歳を追うごとに三災七難は激しさを増すであろう。そしてついに、国を亡ぼす他国侵逼が事実となる。
だが「大悪起これば大善きたる」と。この他国侵逼は、同時に広宣流布の時なのである。
すでに、大聖人に忠誠一筋の仏弟子の大集団は日本国に出現している。この大集団は、正系門家・冨士大石寺の中に在っては御本仏の御遺命を守護し奉り、日本国に在っては御遺命の国立戒壇を実現して国を救わんと、いま「一千万」をめざし大地ゆるがす大行進をしつつある。
やがて一千万の仏弟子が、他国侵逼に怯える日本国において、口々に「日蓮大聖人に帰依し奉れ」と叫ぶとき、広宣流布は一時に成る。
大聖人様は顕正会の前進をお侍ちあそばす。一国諌暁第二年を迎え、六十万達成を見つめ、いよいよ歓喜の大行進のピッチを上げようではないか。
平成十年元旦