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  三大秘法抄拝読

本文
 戒壇とは、王法仏法に冥じ仏法王法に合して、王臣一同に本門の三秘密の法を持ちて有徳王・覚徳比丘の其の乃往を末法濁悪の未来に移さん時、勅宣並びに御教書を申し下して、霊山浄土に似たらん最勝の地を尋ねて戒壇を建立す可き者か。時を待つべきのみ。事の戒法と申すは是れなり。三国並びに一閻浮提の人懺悔滅罪の戒法のみならず、大梵天王・帝釈等も来下して踏み給うべき戒壇なり

大意
 戒壇と申すのは、王法と仏法と冥合して国王と国民と皆一同に本門の三大秘法を持つて、末法の濁意の世に恰も往昔の有徳王の覚徳比丘に対する如く、身命を捨て此の法を守らんとする時、勅宣御教書によつて霊山浄土に似た最勝の地を撰んで戒壇を建立すべきである。しかし此れは時を待たなければならない。かくして此の戒壇が建立さるる時を、事の戒法というのである。

講義
  ( 通途の戒法と戒壇

 戒壇とは、通途には戒を受ける場所を申すのであります。此の場所は、壇を築いてその上に昇つて此の作法を致すやうになつてをりますから、此れを戒壇と申すのであります。

 戒壇の起りは、印度に於て釈尊が祇園精舎の外院の東南に設けられたと申すところでありまして、支部に於ては諸方に設けられ、僧侶になる時は皆ここに昇つて戒を受けたのであります。
 日本に於ては鑑真和尚が聖武天皇の時、奈良の東大寺に戒壇を設置し、その後・淳仁帝の時筑前の観世音寺と下野の薬師寺とに設置されました。此れを三戒壇と申します。其の後更に、淳和帝の時近江の延暦寺に設置されたので、四戒壇となつたのであります。


 仏法に於ては
悪を止めて善を作さしむるために、種々の規則を定めてをりますが、それを戒と申します。その戒には五戒・八斉戒・十戒・四十八戒・二百五十戒・五百戒等ありまして、在家の持つべきもの、僧侶の持つべきものなど詳細に定められてをります。
 其の主たるものは
不殺生戒 不偸盗戒 不邪淫戒 不妄語戒 不飲酒戒(以上五戒)不著香華髪・不著香華身 不歌舞昌伎・不往視聴 不座高広大淋 不非時食 不促持生像金銀宝石(通じて十戒)であります。

 仏法に帰依し仏弟子となるには此の戒を受け、その実行を誓ふのが授戒の作法であります。此れには自分が直接誓ふ自誓受戒と、他の人を中間に於て誓ふ他誓受戒とがあります。而して小乗の教に志しその上に戒を立つるは小乗戒であり、此れに対して大乗に志して戒を立てるを大乗戒と申します。既に志す教に於て大小がありますので、その行儀の立て方も異なるのであります。

 小乗戒は
自己の悪を止むるに主眼ををき、大乗戒は進んで仏を期するを主眼とするのであります。かように戒に大小がありますからその授くる戒壇に於ても小乗の戒壇、大乗の戒壇といはれ、東大寺等三戒壇は前者であり、延暦寺は後者であります。此れについては種々の論議もあり委細多義をきわめてをります。



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