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  三大秘法抄拝読

  ( 受持口唱を本門の本円戒

 此れ等に対し、大聖人の立て玉ふ戒は既に教が本門の御本尊を受持し、南無妙法蓮華経と唱へるのを宗旨としてをりますが故に、受持口唱を本門の本円戒となさるのであります。
 三大秘法口決に「
本門寿量の大戒は虚空不動戒無作の円戒と名け、本門寿量の大戒壇と名づく」と仰せられ、「受持即受戒なり、経に云く是れを持戒と名く」と仰せられてをります。即ち一々の行為に於て悪を止め善をなさしむる戒を廃して、一途に仏の因行を行ずるのであります。

 此れは第一に仏法からいつて、末法の衆生は正しい道を行ふといふことに於ては最も行ひがたい衆生で、むしろ悪いことをする機根であります。それ故悪機、謗法、逆縁の衆生と呼ばれます。
 此れ等の衆生は、一々の行為そのものを目標として此れを規律づけて、完全を期することは出来ないのであります。それ故、仏の因行である妙法蓮華経を一途に持ち、下種することが唯一の道になるのであります。
 語を換へていへば、直ちに自律の本を得せしむることであります。

 第二には末法に於ては、此の衆生には爾前権教等の教は用をなさず、一途に仏法の中の最も真実なる下種の大法でなけれは教益がないのであります。此の下種の大法に於ては十界三千の振舞悉く慈悲の大光明に照されて立派な働きとなるのでありますから、一々の行為そのものを所対として修行することを主としないのであります。真実の正しい世の中、かくあるべき世界、かくすべき自己を知るものは、一々の行為の規律は必要がないのであります。
 其れ故、下種の大法に於ては一々の戒を立てることをしないのであります。此れが仏法の真意であります。といつて、戒を廃するのであるからどんなことをやつても差支へない、というのは誤りであります。戒を廃するとは、大小乗の戒を立てないことであります。

 若し信心未熟にして、自己の性格行為に欠陥があるもの、或は時代の事情によつては、適宜自在に行為を目標として修行することも必要があるのであります。それ故日興上人は次の如く仰せられてをります。
 「
日興云く、未れ波羅提木叉の用否、行住四威儀の所作、平瞼時機に随ひ、持破凡聖あり。若し爾前述門の羅を論ずれば、一向に制禁すべし。法華本門の大戒に於て、何んぞ依用せざらん哉」(五人所破抄)
 よつて以て、御意をうかがひ奉ることができます。

 日蓮大聖人の本門の本円戒は、御本尊を受持し題目を口唱することでありますから、此戒法は御本尊を安置し奉る場所を必須条件と致します。徒つて戒壇といふことになるのであります。前述の如く、通途には戒法と戒壇とは別でありますが、
大聖人の仏法に於ては一つでありまして、帰するところは戒壇であります。故に戒定慧の三大秘法に於て、戒壇と仰せられ玉ふのであります。


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