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   日蓮本仏論者 福重照平の 信・行・学

   
応身常住

 (
) 総じて爾前迹門の空蕩(くうとう)門に於て施設する宗教はいざ知らず、法華経の本門に依憑(えひょう)する聖祖の宗教は 現世に寂光の宝刹(ほうせつ)を出現し万民、鼓腹撃壌(こふくげきじょう)、不老不死の理(ことわり)を現実すべく大願され勧奨されてある。
 仏法に その所詮とする建立門のあるを知らずして、いずれの宗教も諦(あきら)めを教ゆるものとの見解は 吾人の片腹痛しとする所である。(


 順化のみならず 寧(むし)ろ逆化の利益を眼目とする聖祖の宗教は 衣食を求むるものに法を説くの妙用がある。彼等が己れの志求に反するものを与えられたるよりして発する 説教者と大法に対する
憤激と讒謗(ざんぼう)は 下種結縁に成功したるを物語るものでないか。
 聖祖は念仏を求むるもの真言を求むるものに 妙法を授けられた。求めざるものを与うる所に 聖祖の規模があるではないか。聖祖は現世安穏を祈願するものに向かって、
大難来るを以て法華の現証利益と諭(さと)された。()能く大法を転じて 順逆の二縁を化してこそ 法門の施主ではある。

 末法には逆化の利益を専らとすというても 順化の利益がないと云うのではない。此経を信じ奉るものは 成仏得脱涅槃の大楽を受くるばかりでなく、現世に於て世間的の福報を得んことも 「
亦於現世 得其福報」の経文に照して疑いはない。しかも猶ともすれば 作仏の障碍(しょうげ)となる過去遠々劫の諸種の罪業を 今生一旦に招き起して、之を消滅せしめることを急務とするから、随順信伏の士といえども 幾多の難を経歴して後、初めて今世の福報を獲得する覚悟が要る。況や逆縁の輩は 福報を得る理はない。
 先ず
福報を与え之を歓喜せしめて、さて徐に正法に引入する摂受的方便は 用ゆべく許されていないから、折伏弘教の代償として受取るべきものは唯 反抗罵詈讒謗のみとさえも覚悟しなければならぬ。自身過去の罪報になやみ 更に化佗行に於て反抗を予期せねばならぬ。末法の修行は 随分難事といわねばならぬ。しかしそれは修行の過程で 結末ではない。

 折伏修行の結末には
自佗倶安 同帰寂光の現実の社会が輝いている。我等が目標とする此の究竟の社会には 各国の対立、各国民の反感などあるべき筈はない。しかしその過程に於て 各国対立し国民的競争の渦巻く間、いかに避けんと努力しても 武力的解決に訴うるの絶無なるを保し難い。我国が法華経の本国土妙たる使命、我国民が一切の人類を法華の持者たらしむべく不惜身命的に活動すべきの使命は 猶長き年月を経て初めて完成されるであろう。
 日本国家も亦 吾人と等しく
幾多の受難を経て 初めて歓喜と光栄を受取るであろう。吾人の三毒をそのままに、国民相互の嫉妬心を押隠して 世界の平和を議することの 終に徒労に帰するを悲む。吾人は先ず南無妙法蓮華経を以て 三毒を浄化せねばならぬ。吾人は先ず至高至大の使命を持つ 我が国家を祈りて世界を平和に導かぬばならぬ。

 日本国家を没して 世界の平和はあり得ない。個性的応身を没しては 普遍的法身はあり得ない。日本に依って顕わさるる世界でなければ
寂光に即したる娑婆ではない。日本は世界の全体よりも偉大である。
 日本国民も亦 世界の人類を背負うて立たねば嘘である。法華経 --- 応身常住を説いて無始無終の円満三身を確立する 法華経の機たる日本国民よ! 一切世界の人類を 肩にして立て。


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