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国立戒壇論の誤りについて
再刊後記
( 御遺命の富士山本門寺と改称すべき時 )
昭和四十七年六月 「国立戒壇論の誤りについて」なる著を宗務院より出版してすでに二年四ヶ月になる。その間この書の論旨について真面目な意味での教義的な反論の書が出たことはまだ見聞していない。
勿論ある方面の出版物の中には、この書に対し、口を極めて罵り誹謗を事とする記事を見るが、これは偏狭な自らの見解をまる出しにした感情論にすぎないものと思う。
今回、再びこの書が宗門機関紙大日蓮の別冊として再販されることになったので、まず冒頭に昭和四十五年五月以降四年間の日達上人猊下の御指南中より、国立戒壇に関する部分を抜粋し、掲載させて頂くことにした。
また本著の後記として、最近に散見する国立戒壇論正当化のための迷論に関し、従来の猊下の御指南を根底として蛇足ながら寸評しておきたいと思うものである。
その前に、猊下は、さる昭和四十九年十一月十七日、創価学会第三十七回本部総会で、未来に対する重大な御指南を発表あそばされた。その一部を引用させていただく。
「かくして、かえりみるのに、今や大聖人の仏法は全世界に広宣流布しつつあると思うのであります。ひるがえって我が日本国一国の広宣流布の状況を見ますと、近年の創価学会の布教努力によって、日本全国に大聖人の仏法、南無妙法蓮華経を聞かない者はない、と思います。では、日太一国の広宣流布はいつか、と申しますれば、これは重大問題で種々の見解の相違はありましょうが、私の考えを申しますれば、大聖人は天台大師が南三北七の法敵を破折したときに、中国一国に法華経は広宣流布したと申され、また伝教大師が南都六宗を論破したとき、日本国津々浦々に法華経の広宣流布はしたと申されております。
今、深くこれを思うに、日本国全人口の三分の一以上の人が、本門事の戒壇の御本尊に純真な、しかも確実な信心をもって本門の題目、南無妙法蓮華経を異口同音に唱えたてまつることができたとき、そのときこそ日本国一国は広宣流布したと申し上げるべきことであると、思うのであります。この時に我が大石寺は、僧侶の指導者たち、信徒の指導者たち、相寄り相談のうえ、大聖人ご遺命の富士山本門寺と改称することもありうると、信ずるのであります。」
ここに猊下は、きわめて慎重な表現をとられつつも、御遺命の富士山本門寺と改称すべき時と、条件の大綱を、示され給うたのである。
阿部教学部長は、 「国立戒壇論の誤りについて」なる著を宗務院より出版の後、二年四ヶ月を経てさらに、“正本堂御遺命戒壇論正当化”のための迷論を、この「再刊後記」に重ねます。
この 「国立戒壇論の誤りについて」発行の四ヶ月後が、昭和四十七年十月の正本堂落慶でありました。この時、妙信講の諌暁に阻まれ 池田会長は、正本堂を“御遺命の戒壇”と云えませんでした。
では、池田会長の「正本堂 慶讃の辞」を、見ておきましょう。
「妙壇は夫れ正本堂の中心にして則ち一宗一山の根本大道場たる処なり。その大屋根は現代技術の最高峰をゆくサスペンション構造を採用し、リーマン多様体(マニフォード)四次元宇宙の形相構造にさも似たり。其の項は一際高くして法華独妙醍醐の正主此処にましますを示し、高さ六十六メートルの項上は法灯連綿六十六世を寿ぎ表わすものにして、華麗悠々・姿は鶴翼広く虚空を舞い羽ばたく様に相似たり」
「生命の尊厳は是れ正報、殿堂の荘厳は是れ依報、爾れば此の正本堂の荘厳は、依正不二一体の下に詣ずる人の尊厳を増進し、其の色心に光を副えて止まざるものと謂いつ可し。然れ共、信受の人未だ天下一同の義数に満たず、此れを以って省れば大願未だ達せず広宣流布は未来に在り、量其れ甚だ近きに在りと信じて勇猛精進し、御金言を体して随力弘通に励まざるべきや」(「正本堂の詩 落慶式典記録」、聖教新聞社)と。
この晴れがましい舞台において、喉まで出かかった「本門戒壇」・「御遺命の戒壇」・「御遺命の成就」・「仏教三千余年・史上空前の偉業」の言葉を呑み込んで
池田会長はさぞ口惜しく、また屈辱の思いであったことでしょう。
せめてもと池田会長は、側近の福島源次郎氏をして下山バス車中の創価学会員に、“池田先生の伝言”として 「本日、七百年前の日蓮大聖人の御遣命が達成されました。ありがとう」と、伝えさせたのでした。
さて 昭和四十九年八月、政府への“欺瞞回答撤回”を強く求める 妙信講を解散処分にした後は、もう宗内には“正本堂御遺命戒壇論”に異義を唱える者はありません。よって、富士大石寺を“富士山本門寺と改称”すれば、その時・正本堂は御遺命の”本門寺の戒壇”となる、これが池田会長の狙いでありました。
細井管長の上記 “本門寺改称”発言は、妙信講解散処分のわずか三ヶ月後のこと。阿部教学部長はこれを受け、さっそく池田会長の提灯持ちを勤めます。
( 平成十五年四月三十日、櫻川
記 )
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